「線形と非線形の間のギャップを埋める技術」に関するメモ

 題に挙げた「線形と非線形の間のギャップを埋める技術」を考えた時に
最初に思い浮かぶのは、やはり

1)「情報幾何学
  曲がった空間(個々のデータに非線形性が観察されることの裏返しと
  も考えられる)は、複数の連なる接空間(線形な空間)の関係性で
  表される

でしょう。
 現状で非線形性に取り組む際に利用できる唯一の道具立てなのでは
ないでしょうか。
 次には、

2)「白色雑音を搬送波に見立てる『変調・復調』」
  「変調・復調」は
  「信号が存在する『空間aの全体』と搬送波の近傍で表される
  『空間aの一部』との間の非線形写像」と考えることができる。
  更に
  「空間全体に非線形特性を作用させても、
  白色雑音とその近傍では、元の白色雑音の全体にゲインがかかった
  ような状態になり非線形にならないという特別な現象が起きる」
  また「白色雑音の特性を持つ実体としての雑音は無数にあるので、
  『空間aの全体』にに対して非線形特性が作用したとしても、実際に
  非線形特性がかかる範囲とかからない範囲とが、『一つの空間a』の
  中にまだら模様に混在することになる」
  であれば
  白色雑音を搬送波に見立てて
  「『空間aの全体』と白色雑音の近傍で表される『空間aの一部』
  との間の写像」が行えれば、信号が存在する空間全体に非線形
  特性が作用してても、白色雑音の近傍で表わされる線形性を保った
  空間で、信号に対する処理などが行えるようになる。

を挙げたいです。2)の「白色雑音を搬送波に見立てる『変調・復調』」は、
1)の「情報幾何学」とは異なるタイプ(動作メカニズムが異なり、おそらく
使い道も異なる)の道具立てになることは明らかです。
 2)は、

sigprocrandwalk.hatenadiary.org

 

に記載した内容を元に、特に「『変調・復調』とはどういう技術なのか」に
ついて考えを進めたものです。URL先にも書いてますが、査読などのチェックは
受けていませんので、書かれている内容や個別の実験の結果などをもとに
ご判断いただければと思います。査読無しという状況は面倒な話でほんと
申し訳ありません。全面的な肯定でなくても、まずは興味を持っていただければ
自分としては嬉しいです。
 世間的には「変調・復調」は枯れた技術と思われてますが、搬送波を
「単波長のピュアなサイン波」とする限定を外せば、まだ発展の余地がある技術
ではないでしょうか。
 しかしながら、調べてみて驚いたのですが、実は「復調」は、搬送波を
「単波長のピュアなサイン波」とするラジオ放送などで実用化済みの最も基本的な
内容でも、数学的な定式化は行われてないようです(自分が調べた範囲では
見つかりませんでした。もちろん実用化されてるわけですから手続き的なアルゴリズム
としての計算方法は明確ですが)。「復調」の取り扱いの難しさは「変調」に
含まれる非線形性が原因と思われますので、解決には「情報幾何学」が関係して
いてほしいなと強く期待しています。というかそれ以外の可能性を全く見つけられて
いない状況でして、線形と比べて非線形に対する道具立ての少なさを実感します。
 定式化がされていないということは、どういう状況でどの程度の性能が期待でき
るかなどは、実験事実の積み重ねに頼ることになります。例えばラジオ放送での
信号の帯域と搬送波の周波数との関係は、実験的に不都合が起きないように
設定されてるはずです。搬送波がサイン波だと信号処理におけるサンプリング定理
からの類推も効きやすいように思われます。
 では白色雑音を搬送波に見立てる場合だと、上に類することが一体どうなるのか、
想像することもなかなか難しいように思います。が、これから定式化が進めば、
信号処理におけるサンプリング定理に相当するような「何か」が「変調・復調」で
発見されるようなこともあるかもしれません。
 以上に述べた定式化は自分にとってはとても難しく高いハードルなのですが、
世の中にはこれらの定式化が自明のように思える人物もいるかもしれません
(それは能力の差と言うよりはその人物の持つ技術的な背景によるものと
思いたいですが)。ということで、以上のことが広く世間に伝わって、そういう人物
に辿り着き、議論が始まり活発になることを願って、ここに記すことにします。

 最後に、自分はどうしたいのだろうか、というのを一応書いてみようと思います。
 自分は普段はほぼ一品物のソフトウェア開発をしていますが、今回の話の自分
にとっての始まりである「信号検出方法としての『局所的位相シフト検出法』」
について、汎用のライブラリ(もしくはその発展形)を作って提供したいなと思っと
ります。まだ先になりそうですが、もしご興味のある方は[ fuja2_at_bj8.so-net.ne.jp ]
までご一報ください。
 あと、以上の話が、ここまで読んでいただいた方々の未来のアイデア出しの時にでも、
何かのネタになれば良いなと思っております。

園部和夫 [ aka SigProcRandWalk | SPRW , mailto : fuja2_at_bj8.so-net.ne.jp ]